2009年7月25日土曜日

アートとリアリティ Santiago Sierra

世の中はうわべだけでもちゃんとしなきゃいけない、ため息。そうだよ家に帰ったら、こんなに汚くって薄汚れていて暗くて苦しくて絶望しても誰も助けてくれないし、貧乏から這い上がることなんて想像もつかないし、自分の生活もままならないのに結婚とか家庭とか子供とか、誰かを幸せにしたいだとかそんなこと考えること出来なくって、は?アート?。アートはなんか社会に貢献してくれてんのか!はあ?仕事で忙しいのに完成度の低いゴミみたいな作品!こんなもん見せやがってふざけんな。なにがいいたいかわかんねえよ、社会経験もないしバイトもしたこと無いくせにな、世の中について語ってんじゃねえよお!
と思ってる人に、知ってほしい。見つけて欲しい、あなたと同じハートを持ったアーティストもいて、少しは気持ちを代弁してくれているかもしれないことを。しかも評価もされている。

はい。そういうわけで、今回は、Santiago Sierraを紹介します。スペイン人のスーパーアーティストです。ヴェネチアビエンナーレや国際的なエキシビジョンでも常連の巨匠です。



お金で乞食や売春婦を買って刺青いれたり、黒人の髪を金髪にしたり、インドのうんこ処理カーストの労働者にうんこで作品をつくらせて有名ギャラリーで高額で売ったりやりたい放題。しかもアーティストとして有名な自分は労働者が得るものより多くのお金を得ることが出来るわけです。金持ちや権力が、弱者から搾取するという資本主義の現実を端的に見せつけます。

僕が個人的に好きなのは、アイドリング中の車をギャラリーの中に用意して排気ガスを外に放出させる作品。つまり、環境汚染とかそういう点ではありますが、アートが「影響」を社会に与えているわけです。あとは、ヴェネチアビエンナーレのスペイン館でやったスペインのパスポート所持者以外への入場規制。もしくは展示スペースがレンガでブロックしてあって作品が見れないなど。きれいごとで差別は良くないだのなんだの言うけれど、国籍の問題だけではなく、他者へ閉鎖的にすることや人を区別して優遇したり冷遇したりなんてのは起きている。という「現実」をつきつけてきます。

Sierraは人を安易に楽しませるような作品は作ってない。彼の作品を見たら考えさせられたりムカついたり嫌な思いをするんじゃないかと。そうやって自分を悪者にして、アートでリアリティを追求してるヒューマニスト。あんまり偽善者ぽくもないのもエライですね。作品の見た目は汚くて猥褻なこともあるけれど、きれいなアートだと思いませんか?