2024年9月26日木曜日

映画「PIG/ピッグ」の感想を少し

ABEMAが無料でニコラス・ケイジ特集をしていたので「フローズングラウンド」、「俺の獲物はビンラディン」、「ガンズ・アンド・キラーズ」とたて続けに観ていたのだけど、最後にあんまり期待してなかったんだけど「PIG/ピッグ」を観た。いい意味で裏切られて、素晴らしく良い映画だったので感想を少し。本当は何も書きたくないんだけど(見てない人が多いだろうからここではネタバレは書きません)。ポートランドという美食だのファッションだのでアメリカで一番今流行っている町の郊外から物語は始まる。どういう人向けの映画なのかと言うと、嘘の世界で自分が分からなくなってしまったので、自分を取り戻すために世界をリセットしたことがあるような人とかにはよく刺さるんじゃないかと。まあ、その一歩手前のそういう人のための映画だろうか。ニコラス・ケイジが自然体で自分として生きている姿を見るだけで尊いと感じる。ストーリーは至極シンプルな話なのでどんな映画なのかと事前に情報を入れてみる映画じゃない。いろんなものを失っても自分らしく生きていく人の話だ。初見の人はwikipediaは鑑賞後に読みましょう、映画のストーリーを全て書いてあった。この映画が、ニコラス・ケイジの最高傑作と批評家に絶賛されてるのは良く分かる、それでいて全く持って一般受けじゃない。でも、こういうテーマですらビジネスとしてエンターテイメントに出来る今のアメリカの懐の深さを味わった。この映画のイントロの圧倒的自然に包まれたサラウンドだけで、フィンランド映画、ギリシャ映画、イラン映画、特に静かな映画が好きで単館系シアターで観て来た人には、わくわくが止まらないだろう。無駄な演出もないし、ニコラス・ケイジがあふれ出る自分をうまく抑え込んでいた。隠居してるのは逃げたと思われる節があるが、むしろ自分を守るためにちゃんと生きてる人の話だ、いちいちなぜなにといった事情は説明はされないから察するしかない。この映画には必要なもの以外他には何もない。すばらしかった。僕なんて、自分はなんでイギリスに行ったのか、人生においてイギリスで勝ち取ったものは何だったのか、その結果として社会に迎合するのを止めてしまったことを改めて思い返していた。改めて、良い映画というのは記憶に訴えかけてきて人を雄弁にしてくれますね。ちなみに、私は役者とか画面に集中したいので最近吹替派ですが、吹き替え版も良かったです。




(以下、少しネタバレ)













あの、地下のファイトクラブのパートが映画の話に絡んでないよねという、感想を書いてる人が結構いたので、あのエピソードの自分の解釈を書いておきます。かつては、有名シェフとしてブリブリやっていたので、当然それなりに悪いこともやっていたのでしょう。違法格闘技でのギャンブルなんかもやっていた。奥さんは、その裏社会でのトラブルのせいで命を失ってしまったのではないかと。店をパン職人に任せて帰ってこなかった理由も奥さんを失たからなのでしょう。バックグラウンドは想像するしかないんですが、ロブが隠遁した理由を映画の中で説明してしまうとどうしても鑑賞者のリアクションが一般化されてしまってステレオタイプが鑑賞の邪魔をしてしまうので避けたんだと思います。ここの解釈で、奥さんが死んでしまったので、ファイトクラブでの自分を痛めつけるような行為に走ったと解釈する人もいるが、その場合だと山にこもる流れが読めない。